無料時代における気づかせない金銭流通

最近、Javariという靴&鞄の通販サイトの存在を知りました。
この通販サイトはAmazonが始めた姉妹サイトなのですが、この通販サイトの画期的なのは「やっぱり気に入らなかったというような理由でも返品自由」であり「送料&返送料は無料」という点。

要は気になった商品を気軽にいくつも注文し、家でじっくりと試着する事が出来る。お店では出来なかった、自宅のドレッサー内の服とのバランスもこれなら好きなだけ出来るわけです。


閑話休題
今日はJavariの魅力について紹介したいのではなく、昨今、Javariのように「え?そんなにサービスしてもらっちゃってお店は大丈夫なの?」と逆に心配してしまうようなサービスが増えてきているなという点から、現代の姿についてつらつらと書いてみる。

そのようなサービスの代表例は広告収入を狙った無料Webサービスでしょう。mixiであったり、ブログなどを始めとする無料のWebサービスのほとんどはこの形態です。
サービス自体を無料で利用することができますが、会員情報や日記、写真データなどをサーバーにアップロードすれば、それだけサービス運営側はサーバーの設置、増強、維持などの費用が膨大にかかります。アップロードしなくたって、多数のユーザーがアクセスするだけでも、それに耐えうるサーバー側の回線費は莫大。


当然、利用料無料で運営しててもボランティアで行っているのではなく、そこは広告収入という形で稼いでいるわけです。企業側は「稼いでいる」とはいってもユーザー側としては一切お金を払っている感覚はありません。ここがポイント。
本当にユーザーの財布から一銭も取り出せないなら、広告収入というもの自体の存在意義がありません。実際の所は、一見してユーザーの懐は全く痛んでないようで、その実、間接的にユーザーからお金を吸い上げている(お金を払っている)のです。

こうした「ユーザーにお金の流通を気づかせない」アイデアを巧みに活かしてユーザーを獲得するのが、昨今の無料時代とも言える姿かと思います。

しかし実際には広告を一切踏まず、心にも止めずにお金を一銭も落としてくれない人もいますから、それだけでは赤字になってしまうケースもあり、追加サービス部分で直接的にお金を吸い上げる等の手段も用意しているのがほとんどです。ここも人の心を巧みに読んだ素晴らしいアイデアが豊富で、最初は「お金なんて一銭も払うもんかい!」と心に決めた人も、最終的にはサービスの魅力に取り憑かれてしまった後には財布の紐もユルユルになっていしまい、もっともっとと追加を望んだり。


ちなみにそういう「無料時代」においての懸念も思い浮かびます。何でもかんでも無料という時代に慣れてしまうと、無料を掲げた本当に悪意のある罠にも警戒心無く飛び込んでしまう人が出てきてしまうのではないかと思います。

また無料時代は不況との相乗効果もあって、消費者が「あの会社は無料でサービスしてくれてるのだから、この会社だって」と、財布の紐がきつくなり、サービス性に対して欲深くもなっていくかもかもしれないと思います。無料という形態を取れるならばまだしも、そうはできない企業・お店は、それこそボランティア的にサービスを増やして客に歩み寄らなければ、見向きもされなくなってしまうかもしれません。

サービス性に対しては「欲深く」と書いたものの、一方でコンテンツの質に対する「欲」は浅くなっている面も感じます。例えば無料ゲームなどは「無料だし、こんなものだろう。まあ時間潰しにはなったし」と、冷静に考えれば面白くも無いゲームで半ば無理矢理満足した気になろうとし、本当に面白さを追求して作られている有料パッケージのゲームなどは見ないようにしているようにも。浅くなっているというよりは、妥協している感じでしょうか。
こうなると、大した内容でなくとも無料なら儲かる、とばかりに生産者、消費者が共に殺到して雪だるま式に活発化し、内容の質を追求するパッケージ業界は衰退した果てに、質の浅いものだけが残る時代となりかねません。時代が一昔前に逆戻りしているような。そこからまたどんぐりの背比べ的に競い合いながら質を上げ直していく流れになるのではと懸念しています。

時代の変化とともに、消費者が求めるものは変わっていくもので、それに対応して生産者側もあの手この手でユーザー獲得の策を練るのは良い事だと思うけれども、次から次へと新しい事に乗り移っていくために、一つのベクトルを伸ばし続けることを止めてしまうのもどうなのだろうと思います。昨今の不況を打開するためにお金を流せと言いたいわけではありませんが、やはりお金を払うに値する良質なものもありますし、そちらの方へも目を向けてほしいと思います。サービスなり、コンテンツの質なり、あらゆる面で消費者はもっと欲深くなって良いと思え、それによって時代進化を活性化して欲しいと思います。