ゲームのランキングシステムは刺激を与える存在であるべき

Xbox360にてダウンロード販売タイトル「Dead Rising 2: Case Zero」を一通りクリアした。これをやっててランキングについて思うことがあったので、それに関連する話と共に「ランキング」について思うことをつらつら書いてみる。


▼Dead Rising2: Case Zeroのランキングについて▼
ゲーム中、敵をテクニカルに倒した際に入手できるポイントの累計値でランキングとなっています。時間制限がある内容な為、1プレイ内で無限には稼げないものの、累計のために何周もすれば無限に稼ぐことができます。

ランキングシステムはゲームを盛り上げる非常に重要な要素と思っているのですが、これでは腕前などの凄さは見られず、根気だけのランキングで盛り上がる要素が薄い。桁違いな点数が輝く上位ランクプレイヤーの根気は評価に値するけど、それだけで感動は薄い。「どうすればこんな得点が!?」等というワクワクする疑問も沸く必要無く、「ひたすらやり続けたんだなぁ」としか思わない。「やればやるほどポイントを稼げる」という意味ではオンライン対戦ゲーム等でも一緒だけれども、オンライン対戦の場合は相手も上達していく為、そこには日増しに高い技術を必要とされ続けるけれども、対して上記タイトルの場合は敵はコンピューターであり、周回を重ねても難易度は変わらず、ほぼ腕前はクリアできれば十分過ぎるレベル。


というわけで、ランキングシステムについて思う事をいくつかタイトルの例を挙げながら書きたいと思います。


▼ランキングの働き▼
まずはランキングがある事でどのようなメリットがあるかについて。

ランキングがある事でフレンドのスコアを超えてやろうとか、1位を目指してやろうと、燃える要素となります。じゃあフレンドや上位ランカーと張り合える腕前が無いと楽しめないのかというとそうでもない。

上位ランクのスコアを見るととてつもないスコアを見ることができ、これが驚きとなって刺激をもらうことができます。例えばマリオカートのようなタイムアタック系のゲームにて、MAXスピードでコースアウトする事も無くクリア出来ているというのに、上位のタイムを見てみると半分以下でクリアしていたりする。ここで初めて「何か自分の知らない要素があるのでは!?」と気づく事ができ、これが非常にワクワクさせられる。その謎の要素を探したりする楽しみへと進んだり、リプレイなどがあればそれを見て、驚きのスーパーテクニックを魅せられて、「自分もやってみよう!」と燃えさせられます。

それらの刺激はゲームの寿命を高めることにも繋がり、そうなればゲームへの評価も高まって、次回作への期待が高まります。またその時得られたワクワク感などの興奮によって、友達に勧められる事も期待できるなど、ゲーム会社側としてもメリットは大きくあると思います。



▼微妙なランキングを持ったタイトル▼
ここで微妙なランキングを持ったタイトルを2つほど紹介。まずはランキング自体の意図が微妙なもの。

初代XboxのとあるタイトルでDedicated Server(※1)の立ち上げている時間をランキングとしているものがありました。Tom Clancyシリーズのどれかだったと思う。1位なんかはXbox LIVEのサービスがメンテナンスしている以外はひたすらサーバーを立ち上げて放置しているわけでしょうが、そんな「プレイ」もしない、人格を感じられない1位に輝くゲーマータグ(アカウント名)を見ても何の感動も沸かない。

※1 Dedicated Serverとは
これは他者同士の対戦用のサーバーとしてセッションを立ち上げる事。セッションを立ち上げているゲーム機は入ってきたユーザー同士の対戦の処理に専念するため、自身はではプレイ出来ない。


もう一つ微妙なタイトルというのは、ランキングが悪いのではなく、ゲームシステムのせいでランキングの意味が薄れてしまった例。

Every Extend Extra Extreme」というちょっと変わったシューティングゲーム。プレイヤーは敵を避けつつ、敵が集まったところを狙って自機を自爆させ、その爆風で敵を誘爆させながら破壊する。ゲームオーバーは残りタイムがゼロになる事ですが、敵を倒すと確率で手に入るタイムアイテムを集めればゲームを長引かせる事ができ、より高い点数を稼ぐ事ができるというゲーム。

これは前作、前々作があるのですが、同シリーズは敵と爆発がカラフルで、花火のような綺麗さがある点をより活かすためか、今作では敵を多量に増えて派手になっている。これだけ聞くと問題ないように見えるのですが、このゲームは敵が多くなっても、ゲームのシステム上は難易度は難しくはなっていない。むしろ狙いを付けずとも大誘爆を引き起こせて敵を一掃しやすくなっており、さらに敵が多い分なかなか手に入らないタイムアイテムを多量に手に入るようになってしまったため、「ゲームオーバーになろうと思わない限り終わらない」ゲームと化しています。

スコアランキングの方向性自体は前作以前であれば全く問題なく、ゲームを盛り上げる要素となっていたものの、根気さえあれば無限に稼げるゲームとなった今作では、そのランキングも意味が薄くなっている。


▼ランキングに関連する良いゲームデザインとは▼
先程も微妙なランキングを持つタイトルをいくつか紹介しましたが、やはりただランキングシステムを導入すれば良いというわけではありません。雑なランキングシステムを組み上げてしまうと、ユーザーからは開発陣が目指すクオリティに疑問を持たれ、イメージダウンともなりかねません。

ここでいくつか思いつく、ランキングに関連する良いゲームデザインを作るための要素を書いてみます。

  • 1. 理論値が見えてしまうような単純なシステムはNG

理論値が見えてしまうようなーーすぐに上手いプレイヤーに達成されてしまうようなゲームは、ランキング1位に多数の人がランクインしてしまい、もうその人達はプレイしないどころか、後続のプレイヤーもその上を狙えないのであれば、そもそもランキングプレイをしようと思わないでしょう。

どういうゲームかというと、例えばシューティングゲームにて、敵を倒す事で得られる点数だけで合計点が決まっているようなものは、全ての敵を倒すことが理論値となってしまうのでNG。

それならば点数をバラけさせるような複雑な要素を導入させる。コンボを繋げることでのボーナスであったり、敵の弾をギリギリで避けたり、敵をギリギリまで引きつけて倒すようなリスクを負ったプレイをするとボーナスが入るとか。そのような付け足す形で導入できる複雑化要素などいくらでも例はあります。もちろん 1 からゲームをデザインする時点でランキングを意識して開発した方が良いですが、後から改良するでも十分良いゲームに出来るというもの。

ちなみに登場する敵の合計数は一定だけど、点数の異なる敵の種類の数は毎回ランダム、というような形で点数をバラけさせるような策は尚NG。運も多少混ぜたほうが面白みは出ますが、不運は腕でカバーできるような要素に留めておいた方が良いでしょう。運ゲーは飽きさせる大きな要因です。

  • 2. キャラ性能差があるならキャラ別ランキングを

複数のキャラを選択してプレイできるようなゲームの場合、当然の如くキャラによって性能が異なるのが当たり前。すると必然的にスコアを稼ぐ事においてキャラの優位差が発生してしまいます。キャラ毎の異なる特徴を持たせつつも総合的なバランスを合わせるというのは至難の業であり、そう作り上げるのはベターではあるものの、難しいのはわかりきっているので、それならばランキングをキャラで分けるというのも十分ベターな手。

逆にキャラ別ランキングが無い場合、上位ランクを狙ったプレイには向かないキャラは使われない傾向が出てきてしまい、最終的には特定のキャラだけで競いあうような状況になってしまいます。不向きなキャラに愛着を持っている人などはむしろランキングプレイに見向きもしてくれなくなります。ゲームの寿命が短くなるばかりか、そのゲーム、そのゲーム会社に不満を持ってしまう恐れもあります。

例えばバイオハザード5マーセナリーズ(クリア後にプレイできるモード)というスコアランキングが盛り上がっているゲームも、魅力的なキャラがいるのにキャラ別ランキングが無いために、上位は特定キャラで埋まっています。中には不向きなキャラを使い続けて、そのキャラを使わせたら誰にも負けない腕を持つような人がいたりしますが、ランキングでは下の方になってしまうためにまず誰の目にも入らないか、本人が優位キャラで過去に取ってしまったそれより良い点数を超えられないために、ランキング上には不向きキャラのスコアが載らないとか。

  • 3. 上級クラスの凄さが分かりやすいスコア計算に

初級者や中級者が、上級者のスコアを一目見て「すげー!」と思わされるそれなりの差を生むようなスコア計算にしないと燃えません。具体的には初級〜中級はスコアが右肩上がりだけど、中級〜上級はどんぐりの背比べ状態の計算方式ではNGという話。

例えば前述のバイオハザード5に関連する例をご紹介。

バイオハザード5マーセナリーズは時間内に150体の敵を倒して得られた得点を競います。ボーナスが得られるコンボを切らさないようにしながら敵を倒し、最終的に時間内に全滅させる事が出来れば残りタイムが非常に大きなボーナスとなるため、素早くクリアする事が重要となります。

それに対して、バイオハザード5は拡張コンテンツとして新キャラを導入した「マーセナリーズ・リユニオン」というモードが追加され、上記にも書いた特定キャラばかり使われる問題の対策としてか、どのキャラでも活躍できるようにとスコア計算が改良されました。これが良くなかった。

リユニオンではボーナスの重点が「タイム>>コンボ」から「タイム<<<<コンボ」に変わりました。これにより150コンボが大前提となり、時間がぎりぎりになったとしても、慎重に150コンボを達成出来れば膨大な得点が得られます。残りタイムによるボーナスはリユニオンでもあれど、誤差と言えるレベルになっています。
150コンボは難しいけれども、中級者クラスになれば達成できます。そのため中級者以上は誤差である残りタイム差となるため、スコアもどんぐりの背比べ状態。1000位と1位のスコアを見ても1位の凄さがわかりづらいのです。(誤差と言っても、もしタイムボーナス自体存在していなかったら、上記の理論値問題となるため、非常に重要な要素として働いていますし、その他のボーナス要素もあって複雑ではあるのですが)

そんなわけでリユニオンでは様々なキャラが使われたものの、早々にランキングの競い合いは冷めてしまい、結局は再び旧マーセナリーズの方が盛り上がっているというような経緯がありました。意見は人それぞれあるでしょうが個人的にはリユニオンは計算方式を変えずに、キャラ別ランキングがあってほしかったと思っています。

  • 4. 根気だけで勝負のランキングではNG

前述にも書いた通りですが、前述オンライン対戦ならば敵も上達するので良いというような事を書きましたが、それにしてもスコアが単純に「倒した数」などとしているだけでは、ひたすらプレイし続けたもの勝ちになってしまいます。やり込み度も重要だけど、やはり腕前(技術)が活きる要素で競うシステムの方が良い。

オンライン対戦でよくあるのが自分と相手とのレベル差(腕前差)で勝利した際の獲得ポイントがばらけ、また知り合い同士でわざと勝負をしてポイントを稼ぐような事が出来ないように、負けたらポイントが下がるというのも、維持しなければいけない緊張感が伴って良いでしょう。


要はランキングというのは、腕前(技術力)がモノを言うシステムが良いと思います。根気よりも技術力による「凄さ」の方が、分り易く、派手ですからね。